天地有機-日本の有機農業

有機農業というと、どのようなイメージを持つでしょうか?

有機農産物を購入するとき、なぜ有機栽培のものを購入しようと人々は思うのでしょうか?

 

有機農業は「organic farming」を日本語訳した用語になるのです、

有機という言葉の語源は、「有機化学」の「有機」ではなく、

「天地有機」からきているのです。

1971年に日本有機農業農業研究会の発足に伴い、

一楽照雄さんが名付けたものであり、

「機」の「有る」農業をさしています。

機とは、機会(時、旬)と機械(仕組み)のことで、

要するには自然の摂理にあった農業を目指すものです。

 

現在の日本農林水産省のホームページには以下のように書かれています:

有機農業の推進に関する法律」による有機農業の定義は以下のとおりです。

  1. 化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
  2. 遺伝子組換え技術を利用しない
  3. 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する
    農業生産の方法を用いて行われる農業です。(農林水産省HP抜粋)

つまり、化学的に合成された肥料・農薬を使用せず、遺伝子組み換え品種の栽培を行わない農業であれば、定義上有機農業に当てはまります。これが一般的に私たちが思い描く、「有機農業」だと思います。

 

しかし、有機農産物の日本農林規格を見ると、この定義は有機農業の理念から少しずれていることがわかります。

 

有機農贋物の日本農林規格の第2条では次のように書かれています:

有機農産物の生産の原則は次のとおりとする。

(1)農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用したほ場において生産されること。

(2)採取場(自生している農産物を採取する場所をいう。以下同じ。)において、採取場の生態系の維持に支障を生じない方法により採取されること。』(有機農産物の日本農林規格抜粋)

 

さらには、第3条で使用禁止資材に

「肥料および土壌改良資材(別表1に掲げるものを除く。)」

と明記されており、

自分の圃場の中で循環させることが有機JAS規格の基本理念となっています。

つまり、「有機農業の基本は、有機肥料ですら使わないで、なるべく、ほ場内や周辺にある資材を使って、自然の摂理に基づいて農作物を育てよう」という考え方が基礎となる農業なのです。

このことを理解している人は、日本にどれぐらいいるのだろうか?という疑問が生じます。

少なくとも、私は有機農業を始めるまで、

このことは知りませんでした。

有機物からできた肥料を使って、

化学合成された農薬を使わない農業

(上の法律上の定義にあるもの)が

有機農業だと思っていたし、

物質循環や自然の摂理を利用することが

出発点になっている農法だとは知りませんでした。

 

有機栽培で育てられた野菜は安全」というイメージ

を持っている方も多いと思いますが、

この規格を通して「安全」を目的とした記載は一切ないのです。

有機農業が始まったきっかけとして、公害問題があり、自然環境保護や持続可能性のみならず、食の安全を考慮して推進されているものであることは間違えないのですが、規格に明記されている目的は、一貫して「持続可能な農業」を目指すことだということは、私にとって印象的でした。

 

ここまで、有機農業の定義や規格の内容について少し紹介してきました。

中途半端ですが、今日のところはここまでとします。

後日、このことについて、

歴史的な背景から

今日の日本における有機農業の現状を踏まえつつ、

考察していきたいと思います。