日本の有機農業の現状とこの先向かう未来について

前回の投稿では、有機農業が本来の目指しているものと、

法律上の定義と消費者の意識の乖離について少し触れました。

 

今回は、令和3年に政府が発表した「みどりの食糧システム戦略」について

内容の紹介と、それについて私が思ったことを書いていきたいと思っています。

 

この戦略が発表された背景について、本文より抜粋しています。

「将来にわたり、食料の安定供給と農林水産業の発展を図るためには、生産者の一層の減少・高齢化やポストコロナも見据え、省力化・省人化による労働生産性の向上や生産者のすそ野の拡大とともに、資源の循環利用や地域資源の最大活用、化学農薬・ 化学肥料や化石燃料の使用抑制等を通じた環境負荷の軽減を図り、カーボンニュート ラルや生物多様性保全・再生を促進し、災害や気候変動に強い持続的な食料システ ムを構築することが急務である。このことは、食料・農業・農村基本計画に示された 食料自給率の向上と食料安全保障の確立を確かなものにすることにもつながる。」(みどりの食糧システム戦略 本文抜粋)

 

「本戦略が目指す姿と KPI(重要業績評価指標)」では、

14の項目にわたり目標がかかれているのですが、

重要な目標としては、

  • 農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現。
  • 2050 年までに、化学農薬使用量(リスク換算)の 50%低減を目指す。
  • 2050 年までに、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量の 30%低減を 目指す。
  • 2050 年までに、オーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業(※)の取組面積の割合を 25%(100 万 ha)に拡大する。

が挙げられます。

 

これらの目標を達成することで、以下の3つの効果が期待されている。

  • 持続的な産業基盤の構築
  • 国民の豊かな食生活、地域雇用・所得増大
  • 将来にわたり安心して暮らせる地球環境の継承

 

スマート農業の導入、データ・AIの活用、流通システムの合理化・適正化、研究開発による新たな病害虫・雑草管理技術の確立と普及、人材育成、など、分野横断的に持続可能な農業へ向けて国として取り組むことを宣言しています。

 

2019年における日本の有機農業耕地面積は全体の0. 2%程度であり、

EU加盟国の中でトップの有機農業面積比率を持つオーストリアの24%に比べると

明らかに低いことがわかると同時に、

2050年までに25%を達成するという目標がいかに高い目標であるかも実感できると思います。

 

また、市場としては、

2009年から2017年における有機食品の売り上げが

世界では10倍に伸びているいたあいだ、

日本の伸び率は1.4倍にとどまっていることからも、

日本の有機農業への消費者意識の低さと、商品数と流通システムの遅れが垣間見れます。

 

「みどりの食糧システム戦略」は

とても野心的な目標を掲げており、

少し現実性に欠けるという評価を聞くこともありますが、

これだけ食糧生産に問題意識を持ち、

国を挙げて取り組もうとしていることに

日本人として誇りに思います。

 

私は、有機農業信奉者というわけではないのですが、

農業生産が安定することが

国民の幸せにつながると思っていますし、

そのことに対して真摯に向き合おうとしている姿勢に

賛同しているという感じです。

 

日本で有機農産物について語られるとき、

消費者の視点からみると、

「慣行農業に比べて、野菜の形が不揃い」

「普通の野菜よりも高価」

「購入できる場所が限られている」

「買いたい野菜が必ず売っているとは限らない」

などのイメージがあると思います。

消費者からして、これらのデメリットは、

そんなに不便なことなのでしょうか?

その時手に入る野菜で料理をすることがそれほど難しいことなのでしょうか?

また、自分の体や環境のことを考えて、

少し高くても有機野菜を買う代わりに外食の回数を減らせば、

それほど家計への負担になるとは思えないですし。

 

また、生産者側からすると、

「生産にかかるコストが高い」

「安定的な収量を確保しにくい」

というマイナスイメージもあると思います。

確かに、そういう面もあるかもしれませんが、

果たして、本当にそうなのでしょうか。

 

日本で有機農業が広まらない理由として、

「日本人は環境意識が低いから」

「日本人は日本人を信じすぎていて、有機栽培でなくても、国産であれば安心を感じているから」とか、

有機農業の始まりが1970年代の学生運動と結びついていて、なんとなく反体制的なイメージがある」

などが言われます。

しかし、私が思う、有機農業が広まらない理由は、

「日本人は変化が嫌いだから」に収束すると思います。

そして、慣行農業から有機農業への変換を起こす必要に迫られていないからだと思います。

 

政府のこういう野心的な戦略の発表をきっかけに、

ひとりでも多くの国民が食糧生産・農業を

身近なものとして

自分事として

意識し考えるようになることが

この国の明るい未来につながるのではないかと思っています。

 

ちょっと大げさで、

まとまりのない締めになってしまいましたが、

今日も思ったことをつらつらと書かせてもらいました。

 

参考資料

index-10.pdf (maff.go.jp)

日本の有機農業がいま一つ広がらない構造要因 | 国内経済 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)