エンデの「はてしない物語」をこの年になってはじめて読みました。
幼い主人公、バスチアンが本の世界の中に迷い込むという、子供向けファンタジー小説のような設定だが、大人へのメッセージがいたるところにちりばめられた本でした。
今回はこの本の感想と、読んだ後に得た決意を書きます!
この小説を読んだことがない人のために、簡単にストーリーを説明します。
主人公のバスチアンは、つらい現実を生きています。
少し小太りのバスチアンは学校ではいじめを受けているだけでなく、家庭においても、母親を亡くし、父親と2ひとで暮らしています。
母が亡くなってから、父は自分に向き合ってくれなくなったバスチアンは感じて、寂しい思いをしています。
そんなバスチアンは、いじめっ子から逃げるために不思議な本やに駆け込みま、そして、不愛想な店長に出くわします。
その店長が電話に出るためにお店の奥に引き込んでいる間に、バスチアンはある本に強く惹かれ、それを盗んでしまいます。
本を盗んだ罪悪感にかられつつも、その本の内容が気になって仕方がないバスチアンは、誰にも見つからない場所に隠れてその本を夢中で読みます。
その本の中には、ファンタージエン国という、人間の住む世界とは違う世界が存在しています。そこでは、虚無が広がっており、だんだんとファンタージエン国が消えていっているのです。ファンタージエン国の危機を救う物語がここから始まります。
「はてしない物語」の中で、印象的なシーンは数多くありますが、
なかでも個人的に心に最も残ったことばを2つ紹介したいと思います。
1つ目はファンタージエン国に広がりつつある虚無に吸い込まれたらどうなるのかを描いている箇所です。
ファンタージエン国の住人が人間界に来ると偽りになる
いきるということがこんなに灰色で面白みがなく、神秘なことも驚くこともないのが、これまでどうしても納得できなかった。みんなは、二言目には、これが人生さと言い張るけれども。
だが今は彼にも分かった。この二つの世界がよみがえるためには、だれかがファンタージエンに行かなければならないことが。
虚無に吸い込まれていくファンタージエン国の住人たちは、人間界に送り込まれ、偽りになるのです。ファンタージエン国が消えるほど、人間界には偽りが増えていき、その人間界の世界は今や、灰色がかった世界になっていることを描いた箇所です。
今の生き方が、このままでいいのか?
自分を偽りながら、他人に嘘をつきながら、それが「仕方がないこと」と思って生きていないか?
とエンデは、私たちに強く訴えかけているように感じました。
人生において、大切にしたいものは何か、考えさせられるシーンでした。
2つ目に紹介したいシーンは、バスチアンがアウリンの裏に書いてある言葉を見つけるときです。
「汝の欲することをなせ」
やりたいことは何でもやっていいという意味ではなくて、あなたが真に欲することをすべきだということ。これ以上に難しいことはありません。恐れるとか恐れないとかではない。この道を行くには、この上ない誠実さと細心の注意がなければならないのです。この道ほど決定的に迷ってしまいやすい道は他にないのですから。
アウリンとは、ファンタージエン国の女王である「幼ごころの君」からもらった魔法のメダルで、それを首にかけると、なんでも思い通りになるというものです。
「汝の欲することをなせ」
私自身、自分が本当に欲していることは何なのか、それを考え求めるためにこのブログを書いているので、一度読むのをやめて、考えこんでしまいました。
その裏に彫られていることばに続くことばも、心にしみました。
私はやりたいことをやっているはずなのに、迷いが出てしまうことも、この道を進んでいることの証なのかな?とも思い、もう少し自分を新人てみたいと思わされました。
最後に、あとがきに書かれている内容を読み、この物語の裏にあるエンデの哲学に触れることで、この物語に出てくる全てが一つの大きな意味を持っていることに気づかされました。
エンデはかつて、「なぜ読むのか、なぜ書くのか」に対して、
「私が書くのは遊びだ。無目的の遊び、これが現代に最も欠けているもの。私はこれを取り戻したい」という趣旨の公演をした。エデンの言う遊びとは、暇があるから遊ぶとか、ちょっと片手間に遊ぶというのではなくて、子供の遊びがそうであるように、意図も目的もない、無心な、それがすべてである行為としての遊びである。だからときに命がけの冒険にもなりかねない。
私は、研究をする目的を農業に帰結させようとしていたために、
いろんな迷いが生じていたのではないかと思いました。
もちろん、最終着地点として、農業に活かせる研究をしたいという思いはありますが、
この、エンデの考えに触発されて、
私はもっと自分の好奇心に従って、真剣に遊ぶように研究を進めていきたいと思いました。
そして、私が欲することをなしたいと思いました。
私は、研究を進める中で、
有機物がどのようにして鉱物に吸着し、どうやって脱着するかに興味が湧いてきています。そのことを、心ゆくまで追求したいと思います。
それがどんな意味を持つのか、それが、実社会でどう役に立つのか、を研究のモチベーションにするのではなくて、
ただ、それが知りたいから、それに興味が惹かれるから、という理由で有機物の鉱物への吸脱着を研究していきたいと思います。